いよいよ、当事務所がある千葉県においても「平成28・29年度入札参加資格審査申請」が始まります。
2年に1回、当事務所にとっても大忙しの時期が始まるわけですが、今般は、その「入札参加資格審査申請」においての留意事項の一つ二つを、「基礎編」として書いてみたいと思います。
「そんなこと、とうに知ってるよ!」という方々におかれましては、あくまでも「基礎編」ですから、何卒ご容赦下さい。
「指名が来ない・・・」、「入札公告を見てびっくり・・・」 にはワケがある
ご承知のように、入札参加資格審査申請、つまり「指名参加願い」には、おおよそ「建設工事」、「物品」、「委託」、「測量・建設コンサルタント等業務」の発注業種がありますが、今般は、このうちの「委託」における、「なぜ指名が来ないのか」、「入札公告を見てびっくりする理由」の一例についてお話します。
まずは、指名が来ない・・・その理由のお話から。
さて、「委託」と一口に言ってもあらゆる業種がありますが、今般取り上げるのは、「緑地管理」関係です。
「緑地管理」というと、一般的には、除草や剪定、樹木管理、害虫駆除などがありますが、今般特に取り上げるのは、「除草」つまり「草刈」と「剪定」そして「(樹木の)害虫駆除」です。
「草刈」は「委託」じゃないの?
実は、この「草刈」、少し前までは、「建設工事」として発注していた発注元が少なくありませんでした。もちろん、「草刈」は「建設工事」ではありませんから、今はだいぶ改善され、行政機関等の発注元も「委託」で発注するところがほとんどになりました。
ところが、これが、今でも“純粋”に「委託」で発注されているわけではどうもないようなのです。少し詳しくお話ししますと、結構多くの自治体などでは、「委託」の名簿に登録されている業者であって、かつ、「建設工事」の名簿にも登録している業者を指名の対象としています。
さらには、公園等関係の「草刈」はその「委託」及び「建設工事」の両方の名簿に登録している業者であって「造園工事業者」を、同じく道路関係は「土木工事業者」をその指名の対象としているようです。
しかしながら、そう簡単ではないのがこの「指名」・・・。実は、上記の逆であったり、その区別(公園等関係と道路関係)をしていない発注元(行政機関、高速道路管理者などなど)もあるのです。そして、その際、すべての発注元ではありませんが、単に草刈機や技術を持っていればよいだけではなく、施工後の処理のためにパッカー車を保有している業者でないと受注できないなどということもあります。
つまり、ここで重要なことは、発注元が「草刈」をどのような「かたち」で発注しているのかを調べてから「指名参加願い」を出さなければ、いつまで経っても指名が来ない・・・ということになる可能性があるということです。
少なくとも、「草刈」は、単純に「委託」の名簿に登録していればよいというわけではなさそうだということにはなりそうですね。
造園業者ってだけじゃダメなの?~その1~
さて、つぎは「剪定」です。
この「剪定」ですが、これは多くの造園業者さんが「指名参加願い」を出していると思います。
街路樹の剪定や公園等の管理業務における樹木等の剪定などがその主要な業務であり、これについてはやはり一定の技術を持った造園業者さんがその受注の対象となることは納得です。
しかし、ここにもある隠れた「条件」があります。
通常、造園業さんは、造園工事業者さんであり、つまり、建設業法上の「造園」という業種の許可を持っています。そして、そこには、大抵、1級・2級造園施工管理技士さんがいらっしゃいます。
しかしながら、「緑地管理」における、その「剪定」の業務を落札しようとするならば、もう一つの「資格」が要求される場合があります。
それは、「街路樹剪定士」という資格です。これは、実は、民間資格です。一般社団法人日本造園建設業協会というところが行っている認定資格なのです。
実はこの資格、民間資格と言っても、結構な数の自治体等において、公募型指名競争入札や一般競争入札、業務委託発注などにおいて、その参加要件となっていたりします。
つまり、先述のように、「委託」の名簿のみならず、「建設工事」の名簿に登録されていることに加えて、当該資格者がいなければ、「剪定」の業務を落札することができない、否、応募することすらできないというようなことがあるということです。
ここにも、「指名参加願い」の際には、ある程度の調査は必要だということの一例があります。
造園業者ってだけじゃダメなの?~その2~
さて、最後は「(樹木の)害虫駆除」です。
「(樹木の)害虫駆除」も、「緑地管理」という「委託」にての発注の中に入っているのですが、これについても、実は、単に造園業者であればよいということではないのです。
皆さんは、「農薬管理指導士」というものをご存知でしょうか? これは、農林水産省通知「農薬取扱業者に係る資質 向上対策強化について」(昭和62年2月6日 61農蚕第6166号)に基づいて、各都道府県が定めた、農薬管理指導士認定事業実施要綱等による認定制度です。根拠となるものが法令でないことについての議論はここでは置いておくとして、とにかく、このような資格が存在します。
つまり、自治体等発注の「(樹木の)害虫駆除」の業務を行うには、単に、造園施工管理技士さんだけではなくて、この「農薬管理指導士」(※都道府県によりその名称が異なる場合もあるようです。)がいなければできないということになっているというものです。
「指名参加願い」の際に、「緑地管理」の「(樹木の)害虫駆除」も含めたすべての項目について希望して、そして登録されて、「いざ、入札に参加するぞ!」と意気込んではみたものの、指名が来て、否、指名の前の自治体等からの電話等連絡により、また公募型や一般競争等の場合は入札公告を見て、「農薬管理指導士ってウチの会社にいるのか?」ってなことになる可能性があるというわけです。
この「農薬管理指導士」ですが、各都道府県知事の認定(※年に1回の2日間程度の養成研修(試験含む)がある。)のため、他の都道府県知事の認定者は、養成研修は免除されるものの、勤務先の変更届などを提出しないとその都道府県での「農薬管理指導士」とは認められないようで、結構煩雑になっているようです。
これは余談ですが、農薬というのは、農薬取締法により厳しくその販売、使用等につき規制され、登録制度が規定されています。そこでなのですが、実は、食酢や重曹といった我々が普通に口に入れるものであって安全性に問題ないものであっても、農薬取締役法上は、それらが農作物の防除等に殺菌剤として使用される場合もあることから、それらは「農薬」に当たるとされています。(※登録が必要なものではなく、「特定農薬」というものです。)ちなみに、アメリカでは、病害虫の防除等を意図して使用される物質を含む場合は食品でも「農薬」とされており、何と、ニンニクやゴマ、食塩なども「農薬」指定されています。
まとめ
さて、戻ります。
このように、「指名参加願い」つまり「入札参加資格審査申請」の際には、ある程度調査してからでないと、指名が来なかったり、名簿登録後に入札公告をみてビックリなんてことになることもあります。
自治体等の発注元が、どのような発注をしているのか、受注するためにはどのような設備や資格などを求めているのかなどについて予め知っておくということは「基本」として大事なことです。
ちなみに、千葉県の「ちば電子調達システム」の入札参加資格審査申請のマニュアルには、「委託」の場合に必要な許認可の中に、「農薬管理指導士」や「街路樹剪定士」などの記載はありません。追記されることを望みます。(おわり)