さて、この記事は、以前の記事「マイナンバーと行政書士の職務上請求」の続編のようなものですが、マイナンバー制度開始後、実際、我々行政書士がマイナンバー記載の書類を実務の現場において依頼者等から「提供」される場面が出てくることがあるでしょう。
そのとき、我々行政書士はどのような対応をすれば、いや、その前にどのような準備をしておけばよいのか・・・。
マイナンバー制度自体の話については、もはや「お腹いっぱい」の感があります(笑)ので、ここでは、当該制度が開始された後に我々行政書士の実務の現場で起り得ること、そしてそれにどのように対応・準備すればよいのか、ということについて、少し考えてみたいと思います。
行政書士がマイナンバーが記載された書類を受け取ることはできるのか?
そもそも、我々行政書士は、マイナンバーが記載された書類を受け取ることができるのでしょうか?
番号法では、マイナンバーの提供を受けることができる場合が特定されています。それは、社会保障分野や税分野、災害対策分野、そして地方公共団体が条例で定めるそれらに関する事務その他それらに類する事務に関してのみです。
そうなると、我々行政書士の業務が、その中にあるのか否かということで、当該マイナンバーが記載された書類を受け取る(提供を受ける)ことができるのか否かということになります。
番号法では認められていない利用範囲にて、我々行政書士にマイナンバーが記載された書類が提供されようとする場合はどうなるのでしょうか?
実際に例を挙げれば、建設業許可申請手続において、経営業務の管理責任者の経営経験の裏付け書類として、当該経営業務の管理責任者になろうとする者がかつて個人事業主であった場合に、その者の過去の「所得税の確定申告書(B)」の写しを、役所に提出する必要がある場合です。
実は、当該「所得税の確定申告書(B)」には、平成28年分のものからは、その様式にマイナンバーの記載欄が新たに設けられる(※「国税分野における社会保障・税番号制度導入に伴う各種様式の変更点」(平成27年8月国税庁)より)ため、その時期以降に、当該新様式のものの「控え」を建設業許可申請書の(法定外)添付書類として役所に提出することとなる場合、結論としては、番号法で認められている利用範囲外での利用ですから、我々行政書士は当該「所得税の確定申告書(B)」の「控え」の提供を、依頼者に対して求めることはできず、また依頼者も我々行政書士に提供することはできません。もちろん、役所もそれを受け取ることはできません。なお、これは、マイナンバーが記載された住民票の写しも同じで、以下のような取り扱いとなっています。
「内閣官房 地方公共団体向けFAQコーナー」 Q3-7 個人番号を利用できない事務で住民票の写しを提出してもらう必要がある場合に、個人番号の記載された住民票の写しが提出された場合は、どうすればよいですか?A3-7 個人番号を利用できない事務では、個人番号の記載された住民票の写しを受け取ることはできませんので、その旨をあらかじめ申請者などに十分に周知してください。また、個人番号の記載された住民票の写しが提出された場合には、個人番号の部分にマスキングをすることにより、処理することも考えられます。〔2014年7月回答〕 |
では、このような場合、どうすればよいのでしょうか?
このような場合には、当該「所得税の確定申告書(B)」の「控え」のマイナンバー記載の部分を、予め依頼者にマスキングしてもらったものを受け取り、それを役所に提出するということになるでしょう。
もちろん、将来、番号法が改正されて、建設業許可に関する事務などにもその利用範囲が広がれば、そのようなことをする必要はありませんが、その代わり我々行政書士のほとんどが「個人番号関係事務実施者」となり、「本人確認」や「安全管理措置」の義務が生じるということになります。
まとめ
結局、我々行政書士が、マイナンバーが記載された書類を受け取ることは、現行の番号法上においても、有り得るということ、そしてそのための番号法上の様々な義務を果たさなければならないことがあるということです。
また、逆に、マイナンバーが記載された書類を受け取らないようにするためにやらなければならないことも出てくることもあるということです。
「マイナンバー」は、改めて、税理士さんや社会保険労務士さんだけに関係があることではないということがお分かりいただければ幸いです。(おわり)
自動車の重量税還付の問題に関して、同一意見です。実は、中古車販売業者によるマイナンバーのたらいまわし・・・特にオークション会場にユーザーの個人情報がもろに流通していることについて、取り組んでいます。
滋賀運輸支局の行政機関の保有する個人情報保護に関する法律違反問題に取り組んでいます。 いつか意見交換したいですね
盛武先生、コメント有難うございます!
やはり、民間事業者による個人情報のダダ漏れへの対策は焦眉の急ですよね。
もちろん、我々行政書士も褌を締め直して、襟を正してゆかないといけませんが。
「行政機関の保有する個人情報保護に関する法律」の件、第8条の拡大解釈関係などでしょうか?
ぜひ意見交換したいです! 今後とも宜しくお願いいたします。