一筆啓上/法改正・新制度についてなど

マイナンバーと行政書士の職務上請求

マイナンバー制度の導入は、我々行政書士の「職務上請求」にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

今回は、その辺を少し掘り下げてみましょう。

マイナンバーと住民票

マイナンバーが住民票の記載事項となることは「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部を改正する法律」の成立(平成25年5月)により(この中での住民基本台帳法の改正により)すでに決定されています。

そこでは、マイナンバー(個人番号)も、「戸籍の表示」であるとか「世帯主との続柄」とか「住民票コード」と同じように、「基礎証明事項(氏名・出生年月日・男女の別・住民となつた年月日などの事項のこと)以外の事項」に追加されました。

マイナンバーと住民票の写し

なお、その「基礎証明事項以外の事項」については、市区町村長は、本人等からの特別な請求がなければ、住民票の写し(住民票記載事項証明書含む。以下同じ。)には表示(記載)しないで、住民票の写しを交付することができるとされています。(住基法第12条第5項)

つまり、その「基礎証明事項以外の事項」を住民票の写しに表示(記載)して欲しければ、「特別な請求」(※わざわざ表示(記載)して欲しいと請求すること。)をすればよいというわけです。そして、我々行政書士も、住民票の写しの利用の目的の達成のために必要がある場合には、その「基礎証明事項以外の事項」の表示(記載)を申出ることができるとされています。(住基法第12条の3第7項)

しかしながら、ここで注意しなければならないのは、住基法第12条の3第7項には、その「基礎証明事項以外の事項」中、「住民票コード」と「マイナンバー(個人番号)」についてはこれを除くと規定されているということです。

マイナンバーと職務上請求

つまり、我々行政書士は、その「基礎証明事項以外の事項」中、「住民票コード」と「マイナンバー(個人番号)については、それを表示(記載)した住民票の写しの職務上請求は、結局できないということになっているのです。これは、弁護士や司法書士、税理士や社会保険労務士などでも同じです。

実は、「住民票コード」については、マイナンバー制度の導入の前からそのような規定がなされていました。今般、マイナンバー(個人番号)も「住民票コード」と同等、それ以上に重要な事項であることから、そのような「住民票コード」と同様の取扱いとなったわけです。

行政書士の職務上請求書はどうなるのか

では、我々行政書士の職務上請求書はどうなるのでしょうか?つまり、職務上請求書の様式に何らかの変更があるのか、ということです。

答えは、前述のとおりの取扱いからもお分かりのように、マイナンバー制度の導入によって何ら変更の必要はないということになります。

マイナンバー(個人番号)が表示された住民票の写しの交付方法は?

さて、では、マイナンバー(個人番号)が記載された住民票の写しを交付してもらうためにはどのようにすればよいのでしょうか?

その答えの前に、「住民票コード」を例にとれば、そもそも、当該「住民票コード」がわかれば、何かの手続きの際には、住民票の写しの添付(提出)は必要ありませんでした。ですから、今般の、マイナンバー(個人番号)であっても、それがわかれば、諸手続きに住民票の写しは必要ないわけで、わざわざマイナンバー(個人番号)が表示された住民票の写しの交付を請求する必要はありません。

では、どのような場合に、当該マイナンバー(個人番号)が表示(記載)された住民票の写しが必要となるのか・・・。

最も考えられるケースとしては、本人が自分のマイナンバー(個人番号)を失念したとき(通知カードの紛失や番号カードが手元にないなど)でしょう。

したがって、本人が「特別の請求」をすれば、マイナンバー(個人番号)が表示(記載)された住民票の写しの交付請求をすることができます。

また、この請求は、委任状によって任意代理人(法定代理人も当然できます。)もできますので、結局、本人以外の者が当該本人のマイナンバー(個人番号)が表示(記載)された住民票の写しの交付請求をしようとするならば、本人の代理人となってその請求をすることとなるわけです。しかしながら、この場合、当該任意代理人というのは、あくまでも個人の立場でのものであり、行政書士という職業は関係のないこととなります。

なお、そうやって請求し、無事交付が決定されたとしても、当該本人のマイナンバー(個人番号)が表示(記載)された住民票の写しは、その場では交付されず、本人の住所地に郵送されるという扱いになっています。(※総務省:「住民基本台帳事務処理要領」による。)

まとめ

マイナンバー(個人番号)は、法令により、社会保障関係、税関係、災害対策関係の事務に関するもののみ、それを収集し、保管することが可能です。(※平成30年からは、これらに加えて、預貯金に付番することやメタボ健診にかかる事務などに利用されることが決定しています。)

ということは、我々行政書士は、それが旅券事務や戸籍事務、自動車の登録に関する事務(※将来これらにも利用範囲が拡大されようとしています。)などに利用範囲が広がらない限りは、そもそも「職務上」マイナンバー(個人番号)は必要ありません。(※成年後見人としての事務遂行のために必要があっても、当該成年後見事務は行政書士業務ではありません。)

また、将来、職務上、マイナンバー(個人番号)が必要となる場合であっても、それは職務上請求によって手に入れるということはできず、結局、マイナンバー(個人番号)は、本人から入手するということにしかならないでしょう。(おわり)

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