【みんなのギモンの解消】「一式工事」における“総合的な企画、指導、調整”ってどういうこと?

建設工事の「一式工事」における“総合的な企画、指導、調整”を定義づける意味

建設工事は、ご承知のように、「土木一式工事」と「建築一式工事」の2つの「一式工事」と他の27の「専門工事」に分類されています。

「専門工事」については、それがどのような工事なのかということは、国の告示や通達(「建設業法第二条第一項の別表の上欄に掲げる建設工事の内容を定める告示(昭和47年建設省告示第350号)」、「建設業許可事務ガイドライン(平成 13 年 4 月 3 日国総建第 97 号)」)を見れば、その内容、例示によりだいたいわかりますが、この「一式工事」というのはそれを見てもよくわかりません。なぜならそこには、「土木一式工事」については、「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事」とあり、「建築一式工事」については、「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と記載があるだけだからです。これでは、具体的に、どのような工事がそれに該当するのかがよくわからない、これが多くの建設業者、はたまた我々行政書士にとって、否、実は知事許可権限者である各自治体においても非常に“悩ましいもの”であることは否めない事実なのです。

つまり、そこにある“総合的な企画、指導、調整”というものはいったいなんのことを指しているのか、つまりその定義はどういうことなのかということが、これまで大いなる“ギモン”であったわけです。

ちなみに某自治体では、「建築一式工事」において、“総合的な企画、指導、調整”の定義を明確にしないまま、「建物の新築工事または建築確認申請が必要な程度の増改築工事のみが建築一式工事である」との独自の“定義”付けをしていますが、実は、「新築または建築確認申請が必要」ということを基準にすることは「危険」なのです。それはつぎのようなことがあるからです。

例えば、「プレハブ物置」 についてですが、これが、床面積が10㎡を超えるもので、防火地域・準防火地域以外の敷地に建てるものであれば、建築確認申請が必要となります。なお、「プレハブ物置」であっても、屋根を有し屋内用途に供されるものは建築基準法上「建築物」(※建設業法上「建築物」の定義はありません。)なので、それを「建てる」(※「置いた」ということでも同じ)ことは「新築」となってしまいますし、敷地的(建ぺい率などの視点から)には「増築」であり、いずれにしても「建築物の新築または建築確認申請が必要な程度の増改築工事」ということに当てはまってしまうことになるわけです。他方、繁華街等の防火地域・準防火地域においては、床面積が10㎡以内(※6畳程度以下)の増築工事であっても、それには必ず建築確認申請が要るということもあります。

しかしながら、おそらく各自治体の担当者は、完成した「プレハブ物置」を置くだけというものであれば「とび土工工事」、いや、そもそもそれは建設工事ではないなどと評価するでしょうし、6畳程度の増築工事であれば、「大工工事」、「内装仕上工事」、「屋根工事」など各々主体の工事とそれの附帯工事の組み合わせであるなどの評価をして、おそらくその工事が「建築一式工事」であるとの評価、判断をすることはないでしょう。

なぜなら、それらは“総合的な企画、指導、調整”のもとに行われる工事ではないから、ということがその評価、判断の基底にあるからではないでしょうか?

しかしながら、ではその“総合的な企画、指導、調整”の定義とは何かと問われれば、その答えには窮してしまうというのが現状なのではないでしょうか?

そこで、この際、そのような“悩み”、“ギモン”を解消すべく、公的な資料に基づいて、その“総合的な企画、指導、調整”というものの定義を明確にし、当該「一式工事」というものがどのような工事なのかをハッキリさせるため、そして、許可申請等の現場において、当該工事が「一式工事」であるということを証明するためにはどのような書面等を準備すればよいのかということまでを以下に書いてみました。

この記事をお読みのすべてのみなさまのお役に少しでも立てれば幸いです。

“総合的な企画、指導、調整”の定義の根拠となるもの

この記事を書いている現在(2019.8.1)において、当該“総合的な企画、指導、調整”の定義は、建設業法を所管する国土交通省から明確に提示されていません。

しかしながら、その“総合的な企画、指導、調整”という文言が表れた文書があります。それは、現在は発展的に改正されて(※現在は「一括下請負の禁止について」(平成28年10月14日国土交通省国土建第275号)になりました。)廃止されましたが、「一括下請負の禁止について(平成4年12月17日建設省経建発第379号)」という文書です。なお、これら新規通知と廃止された旧通知が同時に見られるのはこちらです。

当該廃止された旧通知には、「元請人がその下請工事の施工に実質的に関与していると認められるときを除き、一括下請負に該当します」という記述があります。改正された新規通知にも「元請人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく・・・一括下請負に該当します」とあります。そして、その「実質的に関与」の説明として、旧通知には、「実質的に関与」とは、元請人が総合的に企画、調整及び指導(施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人に対する技術指導、監督等)を行うことをいいます。」と書いてあります。
新規通知にも、「「実質的に関与」とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいい、」とあり、さらに具体的なそれら事項についての記述があります。(※前出の通知文のリンクを参照下さい。)

つまり、元請人の役割とは、その実質とは、「総合的に企画、調整及び指導」を行うことである、ということなのです。

「一式工事」が、事実上「元請」工事である(※公共工事は一括下請負は禁止ですし、民間工事における合法的な一括下請負のケース(※個人住宅建築においてあらかじめ施主から書面で一括下請負を承諾する旨を受けている場合など)を除いては「一式工事」が下請工事に該当する事例は極めて少ないので。)ことから、当該元請人による「実質的に関与」の内容が、結局、“総合的な企画、指導、調整”の定義となるものと考えるわけです。

実は、この、筆者の考えと同じ考えの公的な文書が存在します。それは、静岡県交通基盤部建設支援局建設業課編集の「建設業許可の手びき(申請・変更)平成31年度版」の16pです。 以下のとおりです。

このように、“総合的な企画、指導、調整”の定義の根拠を公的な文書(国の通知文及び自治体の手びき)にて示したわけですが、これを定義することは、「建築一式工事」のみならず、当然「土木一式工事」というものがどのような工事であるのかをも理解できることになることは言うまでもありません。

さて、“総合的な企画、指導、調整”の定義付けができたところで、施工された工事が「一式工事」であるか否かの評価、判断は、やはり、この“総合的な企画、指導、調整”の定義を利用してすることが「安全」であり、そして最も腑に落ちるものであるということがお解りいただけたことと思います。

ほかには、施工された工事が「一式工事」であるとの評価、判断はないのでしょうか?

「逐条解説 建設業法解説 改訂12版」(大成出版社)の56pの記載には、「一式工事」は当該“総合的な企画、指導、調整”の下に土木工作物や建築物を建設する工事のほかに、二つ以上の専門工事を有機的(※「有機的」とは、多くの部分が集まって一つの全体を構成し、その各部分が密接に結びついて互いに影響を及ぼしあっているさまのことをいいます。)に組み合わせて、社会通念上独立の使用目的がある土木工作物又は建築物を造る場合、そして必ずしも二以上の専門工事が組み合わされていなくても、工事の規模、複雑性等からみて総合的な企画、指導及び調整を必要とし、個別の専門的な工事として施工することが困難であると認められる場合「一式工事」に該当、含まれるとしています。先述の「建設業許可事務ガイドライン(平成 13 年 4 月 3 日国総建第 97 号)にも同様の記述があります。

しかしながら、これらの工事の場合でも、結局は、一つの専門工事としては施工できない工事であり、「解体工事」という一つの専門工事であっても、それが“総合的な企画、指導、調整”のもとに行われるのであれば「一式工事」になるという国の考え方(※先述の「建設業許可事務ガイドライン」中の記述)に鑑みても、やはり、「一式工事」か否かの評価、判断基準は、“総合的な企画、指導、調整”というものに依拠したほうがよいということに帰結することになるものと考えます。

「一式工事」であることを証する書面等の例(許可申請等における添付書面としての活用を念頭に)

さて、では、施工した工事が「一式工事」であるということを証明する、そのための書面というもの、つまりは当該工事が“総合的な企画、指導、調整”のもとに行われた工事であることを証する書面等というのはどのようなものがあるのでしょうか?

それは、先の、国が出した通知「一括下請負の禁止について」(平成28年10月14日国土交通省国土建第275号)にその内容があります。以下はそれを筆者がまとめたものです。

これがどういう意味を持つのかというと、許可申請者側及び許可権限者である各自治体担当者にとって、工事名称等からはそれが「一式工事」であることが判然明白でない場合に、その評価、判断の拠りどころとしてこれら書面等の“揃い具合”を「使える」ということです。

これらの書面等のすべてが揃うということは、必要でないものもあったりして、困難であろうとは思いますが、当該施工した工事が「一式工事」であるということを証明する一助にはなるものと思いますので、ご参考まで。

◇ 「一式工事」であることを証する書面等の例 ◇
・工事施工計画書

・工事施工要領書(下請業者作成のもの)

・工事施工報告書(下請業者作成のもの)

・工事の安全確認協議組織の設置が確認できる書類

・主任技術者の配置が確認できる書類

・工事発注者との協議・調整が確認できる書面(メモ等)

・工事全体のコスト管理が確認できる書類

・工事施工に関する近隣住民への説明実施が確認できる書類

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメント

お名前 *

ウェブサイトURL