一筆啓上-所長のつぶやき-

「マイナポータル」から見える近い将来の新たな行政書士業務の可能性

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マイナンバー制度運用が開始されました。

今後当該制度は、目覚ましく進化していくものと思っています。

そのなかでも今回は、「マイナポータル」という、マイナンバーを利用したインターネット上で行政機関等による個人情報のやりとりの記録が確認できるなどの仕組みにおける、「ワンストップサービス」と「電子私書箱」という機能から見える、近い将来における新たな行政書士業務発生の可能性について書いてみたいと思います。

「マイナポータル」とは・・・

別名「情報提供等記録開示システム」といい、行政機関がマイナンバー(個人番号)の付いた自分の情報をいつ、どことやりとりしたのか確認できるほか、行政機関が保有する自分に関する情報や行政機関から自分に対しての必要なお知らせ情報等を自宅のパソコン等から確認できるものとして整備される仕組み(サイト)で、平成29(2017)年1月からの運用開始の予定となっています。なお、将来は民間サービスとの連携も予定されています。(以下図参照)

この「マイナポータル」にはどのような機能があるのでしょうか。

例えば、各種社会保険料の支払金額や確定申告等を行う際に参考となる情報の入手等が行えたり、引越しや死亡時の際の官民横断的な手続のワンストップ化や納税などの決済をキャッシュレスで電子的に行うサービスも検討されています。(以下図を参照)

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出典:『マイナンバー制度の民間活用について』平成27年9月 経済産業省情報プロジェクト室

このことが何を意味するのか。特に「ワンストップサービス」が意味するものとは・・・

以下、行政書士業務との関係を中心に見ていくことにします。

「ワンストップサービス」と「電子私書箱」機能の利用に見る「手続」

引越し・死亡時等(相続手続関係)における「ワンストップサービス」

経験上、引越しや死亡時などの各種、各所届出等手続きは煩雑を極めます。

遺産分割協議の前に、まずやらなければならない死亡届から始まる役所手続や民間企業への手続は心が折れてしまいそうになるぐらい大変なものです。

これを「マイナポータル」の「ワンストップサービス」を使って簡便にしようと、国が検討中です。

以下の図は、平成26年に、総務省の『個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会』(座長は東京大学大学院教授須藤修先生です。)が日本郵便、NHK、日本生命等の協力を得て、「電子私書箱」の具体的機能の明確化及び関係者の「作業」と「コスト」の明確化における「本人が作成した書類の一斉配信」と「公的個人認証サービスの変更確認機能」を組み合わせた「引越し一斉通知のワンストップサービス」の実証実験の際のものです。

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ここから読み取れることは、引越しのときにおける煩雑な手続きがまさに「ワンストップ」で簡単にできてしまうということです。

これは、死亡時におけるそれでも同じことが言えます。

例えば、現在、証券会社の顧客であった人が死亡した場合、通常、相続人からの申し出により証券会社における手続きが開始されますが、相続人が顧客の資産を把握しておらず証券会社への申し出がないと、当該顧客の資産が証券会社に残り続けてしまうことになります。特に、死亡した顧客がNISA口座を有していた場合、死亡後の配当等は課税となるにもかかわらず、死亡の申し出がないため非課税のままとなり、後に死亡を認識した際に、遡及して課税されるというようなこともあり、その手続は非常に煩雑なものとなっているようです。(『マイポータル/マイガバメント(仮称)およびマイナンバー制度の証券業務での利活用について』2014年12月 野村證券株式会社  より)

このことは、平成25 年6月14 日決定され平成26 年6月24 日改定された国の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」の「世界最先端IT国家創造宣言 工程表」にも、また、平成27年4月28日の「内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室」の『IT利活用促進に向けた取組について』の図表にもあるように、「予め本人が登録した事業者等と死亡情報を共有し、相続手続等を円滑化」できるような仕組みを目指していることからもわかるように、実現すれば国民にとっても、相続手続手続に関与する行政書士にとっても、深く関係のあるところなのです。

ほかにも、戸籍事務へのマイナンバー制度の導入が、法務省の「戸籍制度に関する研究会」でも検討されており、戸籍謄抄本等の取り寄せなどの煩雑な事務からの解放の可能性も含め、「マイナポータル」における、まさに「死亡時ワンストップサービス」の実現が検討されています。

「電子私書箱」機能を活用した申請「手続」

また、以下の図のように、「マイナポータル」の「電子私書箱」を利用した申請「手続」も検討されています。

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「マイナポータル」利用以外の「ワンストップサービス」

官公署調達手続

なお、以下の図のように、「マイナポータル」利用以外でも、個人番号カード(マイナンバーカード)を使った、調達手続の「ワンストップサービス」の実現も検討されています。

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出典:『公的個人認証サービス・個人番号カードの利活用について』

平成27年5月20日 東京大学大学院教授 須藤修
(※須藤先生は、法務省の「戸籍制度に関する研究会」の委員でもいらっしゃいます。)

近い将来における行政書士業務の可能性の展望(まとめ)

ここまで見てきたように、「マイナポータル」は国民等の利便性を飛躍的に向上させる可能性をもった仕組みであることがお解りいただけたのではないかと思います。

そして、それを利活用することにより、これまでの行政書士業務における効率性を著しく高めることができることもお解りいただけたのではないかと思います。

では、「新たな」行政書士業務の発生の可能性についてはどうでしょうか。

まず、「マイナポータル」はあくまでも“道具”です。したがって、その登場により行政書士業務の「相続手続」がなくなってしまうなどということはありません。

「相続手続」の一番のキモは、やはり、遺言も含めた「遺産分割」ではないでしょうか。これはマイナンバー制度の導入や「マイナポータル」の登場によりなくなることがないことは自明です。したがって「遺産分割協議書作成」などの行政書士業務が失われることなどないのです。

しかし、近い将来においては、当該「相続手続」の形が変わってくるものと私は考えています。つまり、死亡届から一貫して、まさに「ワンストップ」で「遺産分割協議書作成」までを、我々行政書士が代行する業務の発生の可能性です。

なお、実は、「相続手続」の前に、将来遺産となるであろう資産(を管理している事業者)を「マイナポータル」を利用して予め登録しておくことの「代行」という業務も出てくるかもしれません。これは当然1回きりで終わることではなく、証券や預貯金口座等の変更等によって継続的なものになるでしょうし、そしてその対象者は全国民等といっても過言ではないでしょう。また、「事前登録」しておかなければ遺産の確定が面倒になるし、遺産分割協議にも大いに影響が出てくるでしょうから。この辺を依頼(予定)者に話をすることも重要となってくるのではないでしょうか。

ここで忘れてはいけないのは「では『マイナポータル』で誰でもいつでもどこでも簡単にできてしまうのなら行政書士のような代行業者は必要ないのではないか?」という疑問が必ず出てくることです。

これはいわゆる「電子申請」関連の行政書士業務が出てきたときに必ずあることです。

さて果たして、今後「マイナポータル」を使いこなせる国民等がどれだけいるのでしょうか?

国は、スマホからでもアクセスできるようにする予定ですが、それでもどれだけの国民が「公的個人認証サービス」を利用して、「電子証明書」を利用して、当該「ワンストップサービス」を自在に利活用できるというのでしょうか。

現在(2016年1月)、多くの方々が個人番号カードの申請手続でさえよくわからない状況を鑑みれば、その答えは自ずと明らかであるものと私は思っています。

調達手続の「ワンストップサービス」化も同様です。すでに電子申請・入札が国をはじめ多くの自治体で行われていますが、マイナンバー制度導入を逆手に取り、これも、行政書士が「一気通貫」で札入れ、契約まで行えるようにすればよいのです。

ただし、何れにせよ「マイナポータル」には、個人番号カードがなければ、そしてカードリーダがなければアクセスできません。つまり、国民等から依頼を受けて「ワンストップサービス」等を行うには、当該カードを「預ける」ことが可能な行政書士でなければ、あるいはもしかしたら「資格者電子委任状」のような形で手続の依頼を受けられるような行政書士でなければならないでしょう。つまり個人情報等に関して(知識面・セキュリティ面等において)信頼・信用のできる行政書士でなければ依頼を受託することが困難となるかもしれないということです。

 

もはや「マイナンバー制度反対!」とか「個人情報の漏えいが・・・」とか「個人番号カードの申請は義務じゃないんでしょ!」とか言っている場合ではないものと私は思っています。特に官公署申請手続のプロである行政書士は。

「これまでどおり、紙媒体で、足を使って、地道に手続きするよ。」という行政書士の方々ももちろんたくさんいらっしゃるでしょう。そちらを選ぶ依頼者の方もおおくいらっしゃるでしょう。

ただ私は、飛躍的に業務の効率性が向上するような、新たな業務を発生させてくれる可能性のある“道具”を使わない手はないと思っています。

今後も「マイナポータル」をはじめとすマイナンバー制度の動向を注視してゆきたいと思っています。(おわり)

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