一筆啓上-所長のつぶやき-

行政書士の倫理① 「報告」と「連絡」の重要性

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「依頼したけどその後何の連絡もない。」・「依頼した仕事の経過を報告してくれない。」

これらは我々の業界に寄せられる“苦情”の中で最も多いもののうちの一つです。前者などは世間一般から見てもお話にならないレベルですが、後者においても決して“専門家”と呼ばれるだけのレベルにはないものと思います。「・・・何の連絡もない。」というのは依頼者から連絡を取ることを試みてもダメだったというものも含まれており、もはや、社会人としての常識すらないというものです。「・・・経過を報告してくれない。」ということについては、「私に任せておきなさい!シロウトは口出ししないで!」という“頼もしい”?ものや、途中で報告することなど何もない、などというものも含まれます。いずれにしても依頼者の立場からすれば、「本当に頼んだ仕事をちゃんとしてるの?」という疑問、不安そして怒りが生じるというのは当然のことです。それで結局業界の窓口に対してその思いのたけをぶつける(つまり“苦情”ということ)ということになるのでしょう。

民法第645条には「受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。」とあります。なお、民法は、我々のような専門職に対して特別に規律を求めている法律ではありませんが、我々行政書士等の“専門家”にとっては、その義務は特に重く受け止めなければならないと思います。しかしながら悲しいかなこれを遵守できない者も少なからず存在するというのが偽らざる現状なのです。

なぜ「報告」とか「連絡」が必要なのか

我々行政書士などの専門職能に求められる「報告」とか「連絡」は、よく一般企業で言われる「報・連・相」(ほう・れん・そう)とはその趣旨が異なります。依頼者である国民等は、自分達が持っていない専門的な技量を持つ職能に対して自分の利益のための事務処理を任せるのですから、少なくともその事務処理が終わった後には、いやそれだけではなくて、その途中にも「報告」や「連絡」を受けたいと考えているはずです。ですから、我々行政書士は“専門家”としてこれにきちんと応える必要があるのです。

このような「報告」や「連絡」の義務のことを、「説明義務」といいます。これは“専門家”がその責任を果たすために必要なものの一つなのですが、仕事を受けたときにその仕事の内容や完了までの見通し、そして終わった後にその仕事についての経過や結果を依頼者に説明するというだけではなく、その仕事の途中にあっても、その経過・事務処理状況をも「報告」、「連絡」することにより、依頼者がその事務処理状況によって、その後どうするのか、これまでのことはそれでよかったのかなどの判断をすることを助ける、もっと言えばその判断を保障する(いわば「自己決定権」の保障とでも言いましょうか。)ために必要な、“専門家”に課せられた義務の一つなのです。ですから、やはり、「プロに任せておけ!」ではダメで、もうそれ以上はないというぐらいに「報告」、「連絡」による「説明義務」を果たした上で、依頼者自身が判断するというものでなければならないのです。

行政書士の倫理としての「報告」や「連絡」

日本行政書士会連合会が平成18年に制定した『行政書士倫理』というものがあります。これは、我々行政書士という職能が専門家責任を果たすために遵守しなければならないことを規定化したものなのですが、その第17条第2項には「行政書士は、依頼者に対し、事件の経過及び重要な事項を必要に応じて報告し、事件が終了したときは、その経過及び結果を遅滞なく報告しなければならない。」とあります。なお、『弁護士職務基本規程』の第36条にも同様の規定がありますし、『司法書士倫理』の第21条第2項には、全く同じ文言(行政書士と司法書士の語が異なるだけ)で規定されています。

先ほどの民法第645条と似ていますが、民法では「委任者の請求があるときは」とあり、『行政書士倫理』等では「必要に応じ」とあります。なお、「必要に応じ」だから緩いんじゃないの?という見方は誤りです。むしろ「委任者の請求があるとき」のほうが誰でも容易に対応できます。しかし、「必要に応じ」とあれば、その「必要」なときというものを我々“専門家”自身が判断しなければならないのですから、逆にかなり高度かつ厳しい規定となっているのです。“専門家”を規律する規定ですから当然と言えば当然ですね。

このように我々行政書士はその職能としての倫理を、専門家責任を果たすために遵守しなければなりません。依頼者に対する「報告」と「連絡」は、その最も基本的かつ最も重要なものの一つなのです。

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